2016年10月22日

奇蹟がくれた数式

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 若くしてこの世を去った異色の天才数学者ラマヌジャンの人生を描いた作品です。
 ラマヌジャンのことは知っていたので映画化されると知り、公開を楽しみにしていました。

 ラマヌジャンのことは何年か前に職場の後輩から教えてもらって知りました。
 その後輩は学生時代に、多角形の角数を増やしていきながら円の式に近付けていくことを試みた際、ネットでラマヌジャンの円周率の公式を知り、わずか数回でほぼ真円に収束する様に驚き、発見者のラマヌジャンに興味を持つようになったとのことでした。
 その円周率の公式が以下の式なんですが・・・

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 (Wikipediaより)

 最初にこれを見たときは、実に奇妙に思えました。何か適当そうな定数値が入った式で、数学的に厳密な根拠があってのものなのだろうかと。
 もちろん、ちゃんと証明されているから世に出ているわけですが、さらに驚くべきことは、その証明をしたのはラマヌジャン本人ではないということです!ラマヌジャンはこのような数式を直感や閃きで、証明の過程もなく発見したというのです。信仰深い本人曰く「神が教えてくれた」と。これを天才と言わずして何と言おうか。

 この式の発見だけでも眩暈がしそうですが、ラマヌジャンは生涯で4000もの定理や数式をまとめており、その無限とも言える創造力に驚嘆せざるを得ません。中にはブラックホール等、近年の物理学の研究に活かされるほど重要なものもあります。
 このような人物が、インドの貧しい環境からあらわれたことも興味深いです。

 そんな偉大な功績を残したラマヌジャンですが、その過程は順風満帆というわけではなく、奥さんを残して渡英し、長い間会えなかったり、当時イギリスがインドを植民地支配していたこともあって差別的な対応を受けたり、深い信仰心から菜食主義であった上、戦争による食料不足も重なって病に侵されてしまうなど、辛く険しいものでした。
 そんなラマヌジャンをイギリスで支えたのが、これまた有名な数学者G.H.ハーディ教授です。数々の功績を残した人物ですが、ラマヌジャンの驚異的な創造力に敬意を抱いており、証明の協力をするなどしてラマヌジャンの功績を然るべき形で世に送り出しました。

 映画では上記の内容がドラマチックに描かれていたのですが、インドの寺院の神秘的な光景やケンブリッジ大学内にある、アイザック・ニュートンはじめ数々の偉人の石像が設けられた荘厳な部屋などが、ラマヌジャンの創造性や数学の神秘さとマッチしていて、迫力のCG映像とかとはまた違った、画としても見応えのある作品でした。

 そうそう、ラマヌジャンを知っている人なら誰でも知っているであろう、タクシー数のエピソードもちゃんとありました。あるんじゃないかなぁと期待していたら、やっぱりあってニヤリとしました(笑)

 それにしても上記の円周率の公式、以前リーマン予想の記事で挙げたオイラーの公式を美しいと感じたのに対して複雑怪奇に感じたものですが、当のラマヌジャンはこういった式を「絵画のようだ」と形容しており、それに美を見出していたことが分かります。
 ラマヌジャンには一体どんな世界が見えていたのでしょうか。
posted by こうじ at 17:07 | 数学・物理

2014年10月08日

中村修二さん ノーベル賞受賞!

 青色LEDの開発で3人の日本人がノーベル物理学賞を受賞されました。

 その中でも、中村修二さんについては、以前の記事にも書いたように、10年ほど前、まだ大学生だった頃に読んだ氏の書籍の影響で、自分にとって最も尊敬している技術者であり、今回の受賞はことさら感慨深いものです。

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 当時、この本を読んだときの衝撃は今でも忘れられません。
 その後の就職先や物事の考え方など、間違いなく僕の人生を変えた一冊です。

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 こちらの書籍も、中村修二さんの主張が分かり易く書かれている良書です。

 ご存知のように、中村修二さんは訴訟の件や歯に衣着せぬ物言いなどで、報道面ではあまり良い印象を持たれていなかったように思います。テーミス社の「青色発光ダイオード―日亜化学と若い技術者たちが創った」(通称テーミス本)のように真っ向批判している書籍もあります。
 中村修二さんとて全てが完璧な人間ではなく、良いところもあれば悪いところもあるでしょう。大事なのは、良いところは良い、悪いところは悪い、と客観的に捉えること。今回の受賞というのは、これまで悪い方に偏向していた中で、良いところを良いと評価されたという点でも価値があると思います。
 同様に、過激と言われてきた氏の発言についても、本当のところどうなんだろう?と考えを巡らせられるようになるといいなと思います。それこそ、まさに氏の言う、自分の頭で考えることであり、その自分が成長すること、ひいては周囲や世の中がより良くなることに繋がるはずですから。

 本当におめでとうございます!
posted by こうじ at 01:02 | 数学・物理

2013年10月21日

リーマン予想 天才たちの150年の闘い

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 提起されてから150年たった今も解かれていない難問についてのドキュメンタリーです。この問題に詰まった魅力と、果敢に挑むも人生を狂わされた数学者たちを紹介しています。

 不規則に現れるようにしか見えない素数に秩序がありそうであること、その秩序が量子物理学の世界と繋がっていることなど、じつに神秘的で驚きました。
 また、現代において素数は重要な暗号システムに利用されているため、アメリカ国家安全保障局が目を光らせていることも興味深いです。

 数学の神秘といえば、以前、信号処理の演算高速化のために多項式近似について調べる機会があったんですが、「数学の部屋」様にて、オイラーの公式がπ、e、i、1、0という数学の特徴的な要素の関係がシンプルな数式で表せることを知り、感動しました。
 そんなすごい関係があるくらいなので、リーマン予想もきっと当たっているのではと思いますし、証明される日が待ち遠しいです。
posted by こうじ at 00:27 | 数学・物理

2010年03月06日

物理学者たちの20世紀

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 アブラハム・パイスという量子物理学者の自伝です。ボーア、アイシュタインをはじめ多くの著名な物理学者たちとの親交に言及していて、そのことを前面に押し出したタイトル、表紙になっています。
 そういった著名な物理学者の話を期待して買ったのですが、それに勝るとも劣らないくらい著者本人の人生も興味深いものでした。

 ユダヤ人であるパイス氏は、第二次大戦時にゲシュタホに逮捕されて、仲間が処刑される中、自身は何とか生き延びれたり、近しい人がナチスによる虐殺にかかってしまったりと、恐怖と悲劇の若年期を過ごしました。
 著者自身の経験をもとに書かれた当時の悲惨な状況やハラハラドキドキな展開は生々しいリアルさがあります。

 戦後はボーアに師事しましたが、そのときの回想からは、ボーアのユニークな言動や温和な性格がよく分かりました。

 そのボーアと量子論について論争を繰り広げていたアインシュタインともアメリカの研究所でいっしょになっています。アインシュタインとの私的な付き合いで得られた日常のエピソードはどれも新鮮でしたし、最後の最後まで研究に打ち込む様もグッとくるものがありました。

 そのアメリカの研究所の所長を務めていたロバート・オッペンハイマーのエピソードもおもしろかったです。原爆開発を主導したほどのカリスマは相当なもので、物理学だけでなく、人文、文学方面にも長じていた彼の語りぶりは聖職者のようだったそうです。しかし、複雑な性格や悲しい家庭事情等、意外な点も赤裸々に書かれていて驚きました。

 もう一人、この本を買う動機として大きかった、フォン・ノイマンについても書かれています。彼はあらゆる分野で画期的な業績を残した天才で、数多の天才的人物を見てきたパイス氏にも「彼ほどに切れる人物はいなかった」と言わしめたほどです。もし彼が現代に生きていたらどんな功績を挙げるでしょうか・・・。
 フォン・ノイマンについてはこちらの話もおもしろいです。

 その他の人物についても、性格や人柄が書かれていて、よく知られている業績とは違った側面を知ることができる有意義な本でした。
posted by こうじ at 00:00 | 数学・物理

2010年02月25日

完全なる証明

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 先日、NHKオンデマンドで「100年の難問はなぜ解けたのか 〜天才数学者 失踪の謎〜」を視聴しました。ポアンカレ予想という史上最大級の難問を解決したロシア人、グリゴリー・ペレルマンのドキュメンタリーです。そのあまりに衝撃的な証明内容に「えー!!」と声を上げて驚きました。そして何より、そのような偉業に対する一切の受賞を拒否し、人との関わりをも絶ってしまったペレルマン本人に強い興味を持ちました。
 そこで、いくつかあるポアンカレ予想関連の本の中で、ペレルマン本人やその育成環境に焦点をあてたこの本を購入しました。

 本書で注目すべきはソビエト時代の教育環境です。平均的な労働者を輩出することを最大の目的とした指導方法は学習意欲を阻害し、選ばれた優秀な人間であっても人種差別によって希望の進学が叶わなかったりと、ひどいところが目立つものでした。
 そんな中で、ペレルマンは非常に恵まれた環境で数学を学びました。「自分の取り組みにはそれに応じた報いがある」と信じ、高いモチベーションを維持することができたのです。このことは場所や時代を問わずに重要なことですが、ソビエトの状況ではそのことが際立っています。

 しかし、純粋すぎたペレルマンはだんだん自分の理想と現実との乖離に苦しむようになったようです。論理や規則に厳格なペレルマンですが「じつはとても感情的な人間なのかもしれない。あの頭脳をフル回転させて、自分の感情になんとか説明をつけようとしているのではないか。」という意見が述べられています。彼はポアンカレ予想という世紀の難問とだけでなく、感情という、おそらく未来永劫、論理的に割り切ることのできない問題とも、一人孤独に闘ったのではないかと思います。

 外界との関わりを閉ざす道を選んだペレルマンですが、今も何かに興味を持って取り組んでいるようです。これからも自分の信念に忠実に、有意義な日々を送ってほしいです。
posted by こうじ at 00:00 | 数学・物理

2010年02月21日

ディスカバリーチャンネルDVD 「なぜ?」に挑んだ科学の歴史100 物理学編

http://www.kadokawa-cc.com/product_info.php?cPath=&products_id=366

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 最近、アインシュタインやボーアといった物理学の巨人達への興味が湧いてきて、関連する書籍やDVDを購入しています。
 その中で、このDVDは物理学で欠かせない有名な事柄を、とても分かり易い言葉や映像で説明しています。

 アインシュタインが発想した「時間が歪む」という考えはほんとうに画期的なことだと思います。「時間の流れはいつから始まったのか」という単純な問いは、宗教上の解釈が与えられることはあっても、科学的に解明するのは非常に難しい問題です。これに対し、「宇宙からの帰還」という書籍で、ある宇宙飛行士が「時間は円環状に繋がっていて、始まりも終わりもなくぐるぐると回り続けているのでは」という見解を示していました。この解釈は、シューティングゲーム「レイストーム」のサントラCDブックレットに収録されていた小説でも「メビウス環のように」という形容で書かれていたのを覚えています。真っ直ぐ一直線に進んでいそうな時間が輪になっていると考えるのは奇想天外のようですが、相対性理論で呈された、上記の「時間が歪む」という事実が明らかにされた今、この解釈は十分にありではないかと思えます。

 これの他にも、生物がどのようにして誕生し、存続し続けているのか、というのも不思議でなりません。栄養分を与えていれば、各種器官が無意識的、自動的にカタチ作られていきますが、自然の過程というにはあまりにも秩序的すぎるし、生物を超越した神のような存在を思わずにはいられません。しかし、時間の始まりはどこかという問題と同じように、じゃあその神はどのようにして作られたのかという終わりのない問いに帰着してしまいます。
 このDVDでも紹介されている「万有引力」にしても「万物に引き合う力があることは分かった。しかし、その力がなぜ働くのか?」という疑問は未だ明かされていません。

 こうしてみると、身の回りの何気ない物事も不思議だらけであることが分かります。
 そんな途方もない疑問の多くが明かされたのがここ2世紀ほどであり、それがこのDVDで紹介されているわけです。
 アインシュタインが、亡くなる直前まで取り組んでいて、ついに成し遂げられなかった、すべての力を統一する「万物の理論」も紹介されていますが、自分が生きている間に確立されるでしょうか。これに限らず、いろいろな発見があってほしいなと思います。
posted by こうじ at 00:00 | 数学・物理